世界文化遺産・富士山の魅力
日本の最高峰である富士山は、2013年、「富士山-信仰の対象と芸術の源泉」として、世界文化遺産に認定されました。
富士山の人気はすたれることがなく、富士山を見ることを観光の目的にしている訪日外国人もいるほどです。
そもそも、なぜ人々は昔から富士山に惹きつけられるのでしょうか。
目次
1.火の神と水の神が住まう聖地
古代の富士山はたびたび噴火が起き、それは富士山の神である「浅間大神」の怒りであると考えられていました。
そして、浅間大神の怒りを鎮めるために誕生したのが、静岡県富士宮市にある富士山本宮浅間大社です。
富士山は円錐形の整った姿をしていることもあり、浅間大神は麗しき女神・コノハナサクヤヒメと同一視されるようになりました。
燃え盛る炎のなかで出産した神話を持つコノハナサクヤヒメは、水の女神でもあったので、同一視することで、浅間大神の火の神の側面を抑えることができると考えられたのでしょう。
水というと、美味しい水の代名詞とも言えるのが、富士山の名水。
その秘密は、豊富なミネラル成分。
水の味はミネラルの含有量に左右され、多すぎても少なすぎてもおいしく感じられません。水が美味しく感じられるミネラル量は30~200㎎/ℓとされ、富士山の水はまさにこれに相当するだそう。
さらに、60%以上が水でできている人間の身体は弱アルカリ性であるため、弱アルカリ性の富士山の水は美味しく、身体にも優しいのだそうです。
2.神と仏が宿る聖地
日本には、「本地垂迹(ほんじすいじゃく)」という考え方があります。
これは、神々は仏の化身というのが教えでです。
つまり、それまで浅間大神であった富士山を大日如来(真言密教における最高位の仏)とし、富士山頂に仏の世界(または仏が神の形となって現れる場所)があると考えられました。
これにより、多くの修験者が山頂をめざしました。
平安時代末期には、数百回と富士山に登拝した末代上人が富士山頂に大日如来を本尊とする寺院「大日寺」を建立しました。
山頂に大日寺が誕生したことで、富士登山は大日如来の知恵を授かる修行のひとつとなったのです。
そして、富士山は、【神と仏がいっしょに宿っている】この上なく神聖な場所として捉えられるようになったのです。
3.富士山信仰の大衆化
江戸時代初期には、角行(かくぎょう)という修験者が、荒行を重ねて宗教的覚醒を得て、祈祷の力により疫病を鎮めるなどで庶民を救済したといわれています。
これにより、富士山への信仰も普及し、関東の各地で「富士講」と呼ばれる民間の信仰グループが結成されました。
その教えは独自の実践道徳をもって発展、組織化し、山の結界が開放される2ヶ月間に平均1~2万の人々が信仰を目的として登拝しました。
富士山への信仰が盛んになったことから、江戸時代後期、浮世絵にも富士山が描かれるようになります。
世界的にも有名な『冨嶽三十六景』は、民衆の間に起こった爆発的な「富士講ブーム」がきっかけといわれています。
4.富士山は日本屈指のパワースポット
富士講は明治時代以降には、急速に減り、富士登山は信心よりも行楽目的のものがほとんどになりました。
しかし、長い間、信仰の対象であった富士山は、山そのものがパワースポットといわれています。
パワースポットとは大地のエネルギーがあふれ、霊的な力が満ちている場所。そこにいるだけで元気になったり、癒されたり、インスピレーションがわいてくるというようなスポット。
なかでも霊峰・富士山のエネルギー(気)はとても強いことでも有名です。
そのため、富士山周辺にも多くのパワースポットが存在しています。
以下に、有名な周辺パワースポットをご紹介します
富士山本宮浅間大社(静岡県富士宮市)
かつて富士登拝のための禊が行われた湧玉池は強力なパワースポットとされている。池の水は富士山の伏流水で、心身を浄化する作用があるとされ、購入することもできる。
北口本宮富士浅間神社(山梨県富士吉田市)
日本三大奇祭のひとつである「吉田の火祭り」で知られる。縁結びのご利益があるパワースポットとして女性の人気が高い。
白糸の滝(静岡県富士宮市)
富士の伏流水が毎秒1.5トンも流れる国内屈指の名滝で、国の天然記念物でもある。富士講の創始者でもある角行が修行前に水行を行った場所でもあり、浄化の力があるとされている。
まとめ
富士山は長い歴史からも人々を魅了し続けていることが分かりました。
富士山に登る自信はちょっとないけど、富士登拝と同じご利益が欲しい……。
そんなときは、富士山から持ち帰られた溶岩や石を使って造成された「富士塚」に登ってみてはどうでしょうか。
富士講が盛んな時代には、健康や年齢、金銭的な理由から富士登拝が難しい人々のために富士塚が各地でつくられました。
富士塚に登ることは、富士登拝と同じご利益があるとされています。
富士講が盛んだった東京都内には現在も50近い富士塚が残っています。
普段は「入山」が禁止されていても、7月1日の富士山の山開きに合わせて祭礼を行い、「登山」が許される富士塚もありますので、興味がある方はぜひ調べてみてください。
また、富士登山を目指している方は、富士山の山開きは吉田ルートが最も早く例年、7月1日に開山予定、須走・御殿場・富士宮は10日ほど遅れて開山します。
登る予定のルート別にチェックしてみてくださいね。
【参考資料】
渡邊直樹 責任編集『宗教と現代がわかる本 2014』(平凡社)
『楽学ブックス 【自然2】 富士山』(JTBパブリッシング)