歩きながら瞑想する|ヴィパッサナー瞑想 その効果と実践法
「瞑想」と聞くと、じっと座って動かない、というイメージがありませんか?
実は、動きながら行うことができる瞑想法もあるのです。
それが、今回ご紹介する「ヴィパッサナー瞑想」です。
ヴィパッサナー瞑想は、「体を動かしながら心をリラックスさせたい」という人におすすめです。
やり方もシンプルで、こちらのほうが実践しやすいという方も少なくありません。
この記事では、ヴィパッサナー瞑想の効果・やり方・普通の瞑想法との違いなどをご紹介します。
目次
4. ヴィパッサナー瞑想のやり方
4-1. やり方の前に知ってほしい「ヴィパッサナー瞑想の三原則」
4-2. 歩くヴィパッサナー瞑想を実践してみよう
1. ヴィパッサナー瞑想とは?
ヴィパッサナー瞑想とは、一言で表すと「ありのままを観察する」アクティブな瞑想法です。
パーリ語で、
ヴィ(vi)・・・ありのままに、客観的に
パッサナー(passanā)・・・観察する
という意味があります。
この2つの意味を組み合わせた瞑想法が、ヴィパッサナー瞑想なのです。
2. 普通の瞑想とヴィパッサナー瞑想の違い、共通点
私たちが一般的に想像する、座ったまま動かず呼吸に意識を集中する瞑想法は、「サマタ瞑想」と呼ばれています。
仏教において、瞑想は「サマタ瞑想」と「ヴィパッサナー瞑想」の2つに分けることができます。
・サマタ瞑想は、 高ぶった精神を落ち着ける「止行」の瞑想法
・ヴィパッサナー瞑想は、落ち込んだ心を活気づける「観行」の瞑想法
2つの瞑想には、上記のような違いがあります。
ヴィパッサナー瞑想は、座って行うサマタ瞑想より、動的な瞑想法です。
・指を動かす
・手を握る
・足が地面につく
といった一挙手一投足を意識することで、今この瞬間の自分に集中する点が、一般的な瞑想との違いです。
まったく違うものに感じるかもしれませんが、瞑想においてどんな方法や宗派にも共通する点は、「今この瞬間に完全に意識を集中する」ということです。
自宅にいても、外出中でも、仕事中でも、いつでもどこでも、今ここにある自分に「気づく(=サティ)」という技術が、瞑想の最も大切なポイントです。
この「気づき」を得られるなら、サマタ瞑想でもヴィパッサナー瞑想でも、自分に合う方法を取り入れられれば良いのです。
3. ヴィパッサナー瞑想の効果
ヴィパッサナー瞑想も普通の瞑想(=サマタ瞑想)も、「今この瞬間に集中する」という根本的な目的は同じです。
つまり、一般的な瞑想によって得られる、
・ストレスが解消される
・平常心を保つことができる
・集中力が上がる
といった効果は、ヴィパッサナー瞑想でも体感できます。
これに加えて、ヴィパッサナー瞑想は歩いて行うこともできるため、体を動かすことによるリラックス効果も感じられるでしょう。
家でじ~っとしているより、少し外に出て散歩をしたほうが、気分がすっきりすることがありますよね。
人間は体を動かすことで、脳が刺激されたりストレス解消ホルモンが分泌され、心を落ち着けることができます。
体を動かすことが好きな人は、ヴィパッサナー瞑想はむしろ効果を感じやすい瞑想法といえます。
4. ヴィパッサナー瞑想のやり方
ヴィパッサナー瞑想は、一般的な瞑想(=サマタ瞑想)よりアクティブに動くことができます。
まずは、ヴィパッサナー瞑想入門編である「歩く瞑想法」について、やり方を知り実践してみましょう。
4-1. やり方の前に知ってほしい「ヴィパッサナー瞑想の三原則」
ヴィパッサナー瞑想は、
・スローモーションで行う
・自分の今を実況する
・感覚の変化すべてを感じる
この三原則を守る必要があります。
1つ目は、「スローモーション」です。
いつもの早さで歩くのではなく、瞑想による気づきを得やすくするため、いつもよりゆっくりと歩きましょう。
2つ目は、「自分の今を実況する」こと。
歩行時の一挙手一投足を、頭の中でシンプルな言葉に表して、途切れることなく実況しましょう。
たとえば、「右足、前に出す、下ろす、左側、前に出す、下ろす……」といった感じに、雑念が入る隙間さえ無くすように、自分の今この瞬間の行動を実況します。
最初は難しく感じますが、自転車の練習のように、実践するうちに自然とできるようになります。
3つ目は、「感覚の変化すべてを感じる」こと。
普段歩いている時は、体の感覚を意識することはありませんよね。
歩くヴィパッサナー瞑想を実践している時は、感覚の変化を意図的に感じるようにしましょう。
・手を振る時の、空気にふれる感触
・足を下ろし地面についた時の、体の振動
・体を持ち上げる時の、重力
このような感覚は、一歩を踏み出すごとに刻一刻と変化していきます。
この感覚を、特に深く考えず、ただありのままに感じましょう。
ヴィパッサナー瞑想は、この三原則を守りながら行いましょう。
4-2. 歩くヴィパッサナー瞑想を実践してみよう
歩くヴィパッサナー瞑想は、いつでも行うことができます。
散歩の時間を作ってじっくり行っても良いですし、通勤中や外出中などでも大丈夫です。
いつでも、自分がやりたいと思うタイミングで行いましょう。
歩くヴィパッサナー瞑想を初めて行う時は、「右足」「左足」「右足」「左足」……と、実況はものすごくシンプルに。
スローモーションも大事ですが、人混みの中で自分だけゆっくり歩くと周りの人に迷惑をかけてしまうため、自分が集中できる程度にゆっくりであれば大丈夫です。
実況とスローモーションでヴィパッサナー瞑想の準備が整ったら、その時の体の感覚にひたすら集中しましょう。
歩く瞑想で実際に行うことといえば、
・自分が集中しやすいよう、できるだけゆっくり歩く
・「右足」「左足」と心の中で言葉にして実況する
・その時の身体感覚に集中する
たったこれだけです。ものすごくシンプルですよね。
「瞑想」と聞くと、準備が必要だったり高度なものだと思いがちですが、それはただの思い込み。
いつでもどこでも誰でも行える方法だからこそ、世界中で注目され実践者も増えているのです。
まずは、この「歩くヴィパッサナー瞑想」を気軽に実践してみてください。
5. 本格的なヴィパッサナー瞑想を体験したい人は
歩くヴィパッサナー瞑想でコツを掴んでくると、常にリラックスできるようになり、心が穏やかになっていきます。
この方法だけでも瞑想の効果は実感できますが、「ヴィパッサナー瞑想を本格的に学びたい」と感じた時は、日本ヴィパッサナー協会が定期的に開いている「体験コース」に申し込んでみましょう。
西日本は京都、東日本は千葉に、それぞれ専用の瞑想センターがあり、瞑想に適した環境で生活を送りながら、正しいヴィパッサナー瞑想法を身につけることができます。
3日間、10日間、30日間と期間はさまざまですが、初心者が体験できるのは10日間まで。
30日間のコースは、かなりの経験を積んでいないと参加できないようです。
「もっと深く実践したい」と感じた時は、体験コースへの参加もおすすめです。
まとめ
ヴィパッサナー瞑想に限らず、どんな瞑想もシンプルかつ簡単で、いつでも気楽に実践することができます。
特にヴィパッサナー瞑想は、体を動かすことができることから、散歩好きやアウトドアが好きな人に合う瞑想法です。
もちろん、サマタ瞑想と合わせて取り入れることでも、瞑想の効果を実感できますよ。
自身の生活リズムやスタイルに合わせた瞑想を行い、心豊かな毎日を過ごしましょう。