ハレの日に食べる縁起物 おせちの由来と食材の意味
お正月といえば、おせち料理ですよね。
おせち料理はハレ(婚礼や祭り、伝統行事などの非日常)の食の華ともいわれています。
ここでは、大人女子が知っておきたい日本文化の一つ、おせち料理のいわれやそれぞれの食材に込められた意味を紹介します。
目次
1. おせちの歴史
2. おせちの料理や食材が持つ意味
3. おせちにまつわる縁起物
1. おせちの歴史
「おせち」とは、元々は中国渡来の年中行事で、それぞれの節供に特別な料理(節供料理)がありました。
1月1日のお正月は別格の節供とされていたことから、節供料理はお正月の料理を指すようになったと言います。
元旦は年神様をお迎えして、1年の豊作と家族の安全を祈願する日です。
「年神様が滞在される三が日は炊事をしない」という風習から、日持ちのする料理を年末に作っておいて食べることになりました。
おせち料理の始まりについては、普段は毎日、台所で立ち働いている女性をお正月ぐらいは休ませようという配慮で始まったものという説もあります。
2. おせちの料理や食材が持つ意味
おせち料理は大きく5つに分けられます。
一つは「祝い肴」、2つめが「口取り」、3つめが「焼き物」、4つめが「酢の物」、最後の一つが「煮物」になります。
それぞれの料理には、意味やいわれがあります。
おせち料理を重箱に詰めるときには、4段重ねが基本とされています。
詰め方は家庭や地域によって異なることもありますが、一の重は祝い魚や口取り、二の重は焼き物、三の重は酢の物、与の重は煮物がセオリーです。
1年の始まりに食べるものなので、彩り鮮やかに配置するのがポイントです。
祝い肴三種
黒豆
これさえあればおせちの形が整うとされる祝い肴三種の一つ。
「まめ」は健康あるいは丈夫を表す言葉で、「まめに働く」などの語呂合わせの意味もあります。
黒豆は、「黒く日焼けするぐらいまめに働けるように」と、無病息災を祈った縁起物です。
数の子
祝い肴三種の一つ。
ニシンの卵である数の子は、子孫繁栄と子宝を祈る食材です。
二親(にしん)から多くの卵が出ることから、めでたいものとされています。
田作り
関東では祝い魚三種のひとつとされています。
田作りという名前は、たくさん獲れたカタクチイワシの小魚(ゴマメ、五万米の字を当てる)を田畑の肥料として蒔いていたことに由来します。
田作りは小さくても尾頭付き。めでたい食事の象徴になります。
五穀豊穣を祈るもので、関西でもおせち料理の定番とされています。
たたきごぼう
関西では田作りの代わりに、たたきごぼうが祝い魚三種に入れられることがあります。
細く長く地中に根を張るごぼうは縁起の良い食材の一つ。
軟らかく煮たごぼうを叩いて身を開いたたたきごぼうは、開運につながるとされています。
<その他のおせち料理>
栗きんとん
鮮やかな黄色が美しい栗きんとんは、金運を呼ぶ縁起物です。
きんとん(金団)には「財宝」という意味があります。
また、山の幸の代表である栗は「勝ち栗」と呼ばれていて、縁起が良い食材の一つです。
錦玉子(にしきたまご)
卵の白身と黄身を分けて、白と黄色の2色にした錦卵は、金と銀にたとえられます。
また、2色を錦とごろ合わせしているという説もあります。
慈姑(くわい)
おせち料理の代表的な縁起物の一つ。
球根部分から芽が出ている姿がめでたく、「芽が出るように」という願いが込められています。
また、慈姑という名前は「慈しみ深い母」につながるともいわれています。
昆布巻き
昆布巻きは、「喜ぶ(養老昆布)」にかけた縁起物。
不老長寿という意味があります。
「子生」と書いて子孫繁栄、「子生婦」と書いて出産にめでたさにもつなげています。
別名に「夷子布」があり、七福神の恵比寿様につながって縁起が良いとされています。
えび
長い触角を持ち、火を通すと背中が丸くなる姿が老人を連想させることから、「腰が曲がるまで長生きできるように」という願いが込められています。
えびは脱皮して成長することから、出世を願うという意味もあります。
タイ
タイは江戸時代から「人は武士、柱は檜(ひ)の木、魚は鯛」と言われていて、祝いの席には欠かせない魚です。
七福神の恵比寿様が持つ魚としても知られています。
「めでたい」にもかけられています。
菊花かぶ
切れ目を入れて、菊の花のように見せたかぶを甘酢につけた料理です。
菊は長寿を表し、おめでたいことの象徴です。
紅白なます
おめでたいことや喜びを表す赤と、清浄や神聖を表す白を組み合わせた、平安・平和を願う縁起物です。
元々「なます」は生の魚介と大根、にんじんと酢で作るものでしたが、現在では生の魚介類の代わりに、長寿への願いを込めた干し柿などが使われています。
煮蛤
2枚の貝がらがぴったり合う相手は一つしかないことから、蛤は夫婦円満を象徴するものとなっています。
3. おせちにまつわる縁起物
お正月を祝う縁起物は、おせち料理以外にも多くのものがあります。
おせち料理に関連するものとしては、次のようなものが挙げられます。
●お屠蘇(とそ)
お正月に無病息災を願って飲むのがお屠蘇です。
名前の由来には諸説あり、「蘇」という悪鬼を屠るという説、邪を屠って生気を蘇生させるという説などが有力です。
「一人これ飲めば一家苦しみなく、一家これ飲めば一里病なし」と言われています。
お屠蘇は、屠蘇散(とそさん)、あるいは屠蘇延命散を本みりん(塩の入っていないもの)と好みの日本酒を合わせたものに付け込んで作ります。
元々は唐の時代の中国で、風邪の予防薬として使われていたもののようです。
屠蘇散は、白朮(ビャクジュツ、キク科のオケラかオオバオケラの根)、山椒(サンショウ、山椒の実)、桔梗(キキョウ、キキョウの根)、肉桂(ニッケイ、シナモンのこと)、防風(ボウフウ、セリ科のボウフウの根)、陳皮(チンピ、みかんの皮)を混ぜたもの。
最近では、ドラッグストアやスーパーなどで手に入れることができます。
お屠蘇を飲むときは、まずお正月の朝に汲んだ今年最初の水(若水)で手を清めて、神棚や仏壇を拝みましょう。
お屠蘇は杯に3回に分けて次いで、3回に分けて飲むのが基本です。
飲む順番は若い人から年長者とされていました。
家族そろって新年のあいさつをしたら、おせちを食べる前に飲みましょう。
●祝箸
おせちやお雑煮を食べるときには、通常の箸ではなく、祝箸を使います。
祝箸は、末広がりの八寸(約24センチ)、柳などでつくられた両方の先端が細くなっている箸で、「両口箸」とも呼ばれています。
この形は一方は神様、もう一方を人が使うためで、神様に捧げた飲食物(神饌)をいただく「神人共食」を意味しています。
お正月の祝箸は、大みそか、家長が箸袋にそれぞれの名前を記して、神棚に供えておきます。
祝箸は使ったら自分で洗って、松の内は同じ箸を使い続けます。
まとめ
いかがでしたか?
おせちについて、何となく知っていても、すべての意味を答えられる人は意外と多くはないかもしれません。
知識があるのとないのとでは、準備ももちろんのこと、おせちをいただくときの心持ちも変わってくるのではないでしょうか。
日本の伝統文化として、ぜひとも覚えておきたいですね。
【参考資料】
『日本の伝統文化和食4 楽しもう!和食と伝統行事』 監修・江原純子 学研
『御節大観』 監修・六雁 旭屋出版
キッコーマン
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