よいお正月を迎えるために準備したい「もの」や「こと」
12月に入ると街にはイルミネーションがきらめき、クリスマスムードが高まって気分が浮き立ってきますが、忘れてはいけないのが、クリスマスの1週間後に新年を迎えるということ。
つまり、12月に入るということは、お正月の準備を開始しなければならないことを意味しています。
では、具体的にどんな準備をしたらよいのでしょうか。
近年は核家族化が進み、伝統的なお正月を迎える家庭も減っていますが、お正月の準備にはひとつひとつに深い意味があります。
日本の伝統を知っていただくために、お正月の準備にはどんな意味があるのか、どんなものを用意するのか、何をしたらよいのかを紹介します。
目次
1.お正月の準備は12月13日にからはじめましょう!
京都の花街には12月13日に、芸妓さんや舞妓さんが、芸事のお師匠さんなどお世話になった方に鏡餅を持ってご挨拶に行く「事始め」という風習があります。
年末の風物詩としてニュースなどで取り上げられることも多いので、ご存知の方もいるかもしれませんね。
花街に限らず、12月13日はお正月の準備を開始する日とされており、一般家庭の大掃除にあたる「煤払い」を行う神社やお寺も少なくありません。
しかし、ここで次のような疑問が浮かぶのではないでしょうか。
きりがよい12月1日や12月15日からではなく、なぜ中途半端な12月13日からなのだろう…?
それは、季節の転換期間である「土用(どよう)」が関係しています。
うなぎを食べる「土用の丑の日」で知られる「土用」は、季節の変わり目である四立(立夏・立秋・立冬・立春)の直前の約18日間のことです。
旧暦を使っていた時代は元旦=立春であったため、その名残で、現在は12月13日が「土用の入り」とみなされ、お正月の準備を始める日として定着しました。
1日で年末の大掃除を済ませるのは大変です。
だからこそ、12月13日から少しずつ掃除を開始してみてはいかがでしょうか?
2.お正月は「年神」を迎える神聖な準備
日本ではなぜお正月がめでたいのか。
その背景には、元旦に「年神(歳神)」という神様を自宅にお迎えし、その年の福を祈るという伝統と文化が存在します。
つまり、日本のお正月とは神事の一つであり、年末の大掃除も神様をお迎えする準備という意味もあります。
年神の正体はご先祖様と考えられており、お迎えする年神は家ごとに異なります。
そのため、年神が訪問する家をまちがわないように、「目印」として門松を飾るようになったのです。
●門松
最近は門松を飾る家庭もめっきり減りました。
準備や処分にお金がかかりますし、スペースをとるため、マンションなどでは規則で飾ることができない場合もあるからです。
門松は飾れないけれど、年神をお迎えする目印は欲しい。
そんな方におすすめなのが、京都の旧家や神社仏閣で門松の一種として飾られている「根引き(子曳き)松」です。
根がついた状態の若松に和紙を巻いて水引をかけたもので、門松よりも省スペースです。デザインも非常にシンプルで、材料の根がついた若松もネットで取り寄せることができるので、手軽に自作することができます。
※注意※
門松や根引き松も12月13日以降に飾るのが一般的ですが、遅くとも28日までには飾るようにしましょう!
31日は「一夜飾り」といって嫌がられ
29日は「二重苦」につながるため
この2日間は避けましょう。
●しめ飾り
しめ飾りはしめ縄と縁起物を組み合わせた飾りで、玄関や家の中の神棚などに飾られます。
しめ縄が聖域をあらわすために飾られますが、しめ飾りも「この家は年神をお迎えできるほど清浄な場所です」ということを示すために飾ります。
●鏡餅
お正月に飾る鏡餅は、
・年神へのお供え
・滞在中の年神が宿る場所
という2つの役割を果たします。
ご神体の一種であるため、鏡餅は神棚や和室の床の間に飾るのが一般的ですが、どちらもない場合は家族が集まるリビングに飾るようにしましょう。
鏡餅の飾り付けは地域によって異なりますが、基本は大小2つの丸餅を重ね、柑橘類のひとつであるダイダイを載せた形です。
最近は入手しやすいミカンで代用することが増えていますが、ミカンは実が熟すと枝から落ちるのに対し、ダイダイは数年間実が枝についたままという特徴を持つことから「代々」と同じ音が名前に用いられたそうです。
ミカンがまちがいというわけではありませんが、やはりダイダイを乗せるほうが長持ちしてオススメです。
門松と同じく、しめ飾りや鏡餅も28日までには飾り終えておくようにしましょう。
3.元旦の食卓の準備も年内に済ませよう
お正月に食べるお節料理とお雑煮については「ハレの日に食べる縁起物 おせちの由来と食材の意味」でご紹介していますので、ここではそれらを食べるために使う特別なお箸である「祝い箸」と、縁起物であるお屠蘇(とそ)の意味を紹介します。
●祝い箸
祝い箸とは上も下も細い白木のお箸のことで、どちらの方向でも使うことができます。
これは「神様と人間が一緒に食事する」という意味があり、お食い初めや結婚式など、おめでたい時の食事に使うお箸です。
1月7日、または1月15日まで同じ祝い箸を使い続ける風習を持つ地域が多いようですが、コーティングされている塗り箸とは異なり、白木の祝い箸は汚れやすくなっています。
衛生面で気になる場合は、せめて元旦の最初の食事だけでも、祝いお箸を使ってみるのはいかがでしょうか?
●お屠蘇
最近は「お正月に飲む日本酒」と思われていますが、お屠蘇は数種類の薬草を浸した日本酒やみりんのことです。
「邪気を屠(ほふ)り魂を蘇(よみがえ)らせる」という意味を持つお屠蘇は、病気や災厄を遠ざけるご利益があるとされる縁起物です。
昔は大晦日に8種類の薬草を砕き、布袋に入れて一晩井戸に浸けてから、元旦にお酒に浸してつくる、非常に手間がかかるものでした。
しかし、現在では「屠蘇散(とそさん)」という名前で、お屠蘇用の薬草が薬局などで販売されています。
薬草がティーバッグに詰められています。大晦日の夜に日本酒に浸しておけば、翌日の元旦にはお屠蘇ができあがるので、試してみてはいかがでしょうか?
まとめ
元旦にくる年神は、小正月(現代の暦では1月15日)に元の世界に帰っていくとされています。門松、しめ飾り、鏡餅などはその日までにかたづけましょう。
鏡餅は「鏡割り」をして食べますが、門松やしめ飾りは「左義長(さぎちょう)」や「どんど焼き」などと呼ばれる火祭りで燃やすのが昔ながらのかたづけ方です。
最近は珍しい風習になっています。
そこで神社では、塩を振って清めてから、住んでいる自治体の分別マナーにしたがって紙にくるんでかたづけることを奨めています。
大きすぎる場合も、小さく切るか折るなどの手を加えても大丈夫とのことですので、安心して準備することができますね。
【参考資料】
新藤由喜子『年中行事・記念日から引ける 子どもに伝えたい食育歳時記』(ぎょうせい)
山本三千子『「還暦」に赤いちゃんちゃんこはなぜ? 冠婚葬祭と陰陽五行の謎』(講談社)
永山久夫 監修『日本人の「食」、その知恵としきたり ——なぜ、切れやすい年越しそばが長寿の象徴なのか』(海竜社)