スロージョギングで脳も体も若返る
元気で長生きするためには、運動が大切であることが知られるようになってきました。
そんな中、器具も使わず、誰でも気軽にトライできる健康法としてジョギングが人気です。
しかし、ジョギングはそれなりに体に負担がかかります。がんばりすぎてケガをする人も少なくありません。
そこで、体力のない高齢者も安全に行える運動として、最近注目を集めているのが「スロージョギング」です。
スロージョギングは、今まで運動をしたことがないような人も、時間がなくて運動できなかった人も、楽しく続けられる魔法のような運動です。
スロージョギングで体も脳も元気にしましょう!
1. スロージョギングとは?具体的にどのくらい?
スロージョギングは、名前の通り「ゆっくり走る」ことです。
「ジョギングがゆっくり走ることなのに、さらにゆっくりってどういうこと?」と思いますよね。
ジョギングしている人はちょっと思い出してみてください。
走っているときに息が荒くなっていませんか?そんな人はジョギングが激しい運動になってしまっています。
スロージョギングはとてもゆっくり走ることがポイントです。どのぐらいゆっくりかというと、笑顔がキープできるペースです。
ちょっと難しく言うと「最大酸素摂取量の50%程度のペース」となりますが、これは人によって大きく異なります。
一般に、ぶらぶら歩くときは時速4km、通勤のときで時速5km、早歩きしているときだと時速6kmぐらいと言われています。実は時速7kmを超えると、ウォーキングよりジョギングの方が楽になります。
そのため、「走ってみて」と言われると時速7km程度で走る人が多いのだそうです。
でも、ジョギング初心者にこのスピードは早すぎます。
スロージョギングでは、時速4〜5kmから始めます。
さらにゆっくり走っても構いません。
2. スロージョギングは疲れにくいうえに消費カロリーが高い!
スロージョギングは、体を痛めにくく、疲れにくいことが特徴です。ランニングでは、足やひざ、腰にケガをしやすいのですが、スロージョギングはこうしたケガをしにくくなっています。
それでいて生活習慣病の予防のほか、ダイエットにも効果が期待できます。
その秘密はどこにあるのでしょうか?
乳酸が溜まらない走り方
人間の筋肉は、大きくふたつに分けられます。
ひとつが瞬発力に優れている「速筋」、もうひとつが持久力に優れている「遅筋」です。
速筋は乳酸を貯めやすく、遅筋は乳酸を貯めにくくなっています。
スロージョギングは乳酸を貯めにくい遅筋だけを使います。
だから、疲れずに長く運動することができます。スロージョギングを続けることで、早く走っても乳酸が溜まりにくくなるのです。
また歩くときには使わず、年をとると衰えやすい筋肉を使うので、健康寿命を延ばす効果も期待できます。
生活活習慣病の予防とダイエット
内臓脂肪が貯まると、糖尿病や高血圧、脂質異常症、動脈硬化などの生活習慣病を引きおこすリスクが高まります。
内臓脂肪を減らすために適した運動のひとつがスロージョギングです。
余分な脂肪を減らすためには1日に200〜300kcalのエネルギーを消費する必要があります。
スロージョギングは、同じ距離を行った場合、エネルギーの消費量がウォーキングのおよそ2倍。
およそ3.5〜5kmのスロージョギングで、200〜300 kcalを消費できるのです。
また、高血圧の人は薬を服用しながらスロージョギングを続けることで、血圧を引き下げる効果があることもわかっています。
さらに血糖値を下げたり、善玉コレステロールの値を高めたりする効果も期待できます。
脳を活性化する
脳細胞は年齢とともに減っていくから、高齢になってもの忘れするのは当たり前と諦めていませんか?
実はスロージョギングには脳を活性化する働きもあります。
MRIという医療機器で脳の容量を測ったところ、スタミナの高い人ほど、記憶に関係する脳の部位、海馬の容量が大きいことがわかっています。
スロージョギングを行うことで持久力が高まってスタミナがつくので、海馬を大きくする効果が期待できます。
また、スロージョギングをすることで脳の前頭葉機能が高まり、頭の働きがよくなることがわかっています。
スロージョギングのような有酸素運動には、脳細胞を増やす働きがあり、脳の機能が向上することもわかっています。
3. 基本は「笑顔を保てるペース」スロージョギングのコツ
スロージョギングを上手に行うためのポイントを7つに分けて紹介します。
①前傾姿勢をとる
走るときには前傾姿勢をとります。
頭から足の指のつけ根まで、1本の柱のようなものだと思ってください。
その柱を斜め前に倒すイメージで前傾します。
②指のつけ根で着地する
走り方は着地の場所によってふたつに分けられます。
ひとつはかかとで着地する方法、もうひとつが足の指のつけ根部分で着地する方法です。
スロージョギングにおすすめなのは、足の指のつけ根で着地する走り方です。
かかとで着地するより受ける衝撃が小さく、アキレス腱をバネにして上手く飛び上がれるからです。
③2本のレールの上を走る
足の運びにもふたつの方法があります。
ひとつが1本のレールの上を走る方法、もうひとつが2本のレールの上を走る方法です。
おすすめは2本のレールの上を走る方法です。
腰やひざに余計な負担をかけずにすむからです。
④あごを上げる
走るときには、よくあごを下げるように言われますよね。
でも、スロージョギングではあごは上げてください。
背中が反りぎみになって、足を引き上げやすくなります。
視線を上げて、景色を楽しみながら走りましょう。
⑤笑顔が保てるペースで走る
スロージョギングで重要なのはペースです。
時速何キロという客観的なものではなく、自分がどう感じるかがでペースを作ります。
基本は笑顔が保てるペースです。
鼻歌を歌ったり、おしゃべりをしたりできるペースとも言えます。
3〜4分走って立ち止まり、すぐに脈拍を15秒、測ってみましょう。
138から年齢を引いて、2で割ります。
測った脈拍を4倍にした数値(1分間の脈拍)が上の計算の結果に近ければOKです。
⑥1日の目標は30〜60分
はじめの目標は、1日15分です。
慣れたら1日30〜60分を目標とします。
まとめて時間がとれなくても、合わせて30分以上になればそれでOKです。
体力に自信がない人は、まず100mゆっくり走ったら数m歩くというのを交互に繰り返すしてください。
数回行うと、続けて走れるようになります。
⑦2〜3週間続ける
スロージョギングの効果は、早い人なら1週間、遅い人でも3週間程度で感じることができます。
効果が出るとやる気も出ますよね。
また、同じ行動を2〜4週間続けると、その行動をとるためのシナプスが発達して、その行動をとることに対する抵抗が減ることがわかっています。
スロージョギングを習慣にするため、3週間は続けてみてください。
【参考資料】
田中宏暁・著『スロージョギング健康法』(朝日新聞出版)
久保田競、田中宏暁・著『仕事に効く、脳を鍛える、スロージョギング』(角川マガジンズ)